【5分でわかる】意外とわかってないフレイルとサルコペニア、ロコモの関係性と違い
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nutripreneurblogを運営しておりますアラフィフ管理栄養士のアラフィンです。
この度は、記事にアクセスをしていただきありがとうございます。
さて、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームと似たような言葉が飛び交っています。
ぜんぶ横文字で、とっつきにくく、どこから手をつけてよいかわかりませんよね。
でも、本当にこれらすべてを詳しく知る必要があるのでしょうか?
私は「No」だと思います。
あくまでも個人的な意見になりますが、自分の職域に関係のあるところを理解し、それを実践現場で使用できる、教育できることが大切なのではないでしょうか。
この考え方に賛同いただける、あなたへ。
この記事では、フレイル、サルコぺニアおよびロコモティブシンドロームについて、軽重をつけて独自の解説をしていきます。
ぜひ、最後までご覧くださいね。
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日本サルコペニア・フレイル学会認定 サルコペニア・フレイル指導士テキスト
フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームのうち一般的に重要度が高いのはどれか?
フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームと、3つも似たような概念を覚えることは大変です。
だから、あえてこの記事では、この3つに軽重をつけたいと思います。
そもそも、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの3つの重要度は、一般的に並列ではありません。
ロコモティブシンドロームの重要度は、日本整形外科学会領域などの特定領域を除いて、フレイルやサルコペニアに遠く及ばないといえるでしょう。
その客観的事実をお見せしますね。
下図は、この記事を書いている2024年7月13日に、私がPubmed(米国国立図書館)でこれらのワードを検索した結果です。
ほら、ご覧の通り、フレイル=サルコペニア > ロコモティブシンドロームと、研究論文数(注目度、エビデンス量)の差は歴然ですね。
だから、この記事では、ロコモティブシンドロームのことは、前半にサラッと、後半にほんのサラッとだけお話し、主にフレイルとサルコペニアにフォーカスして解説をしますね。
覚えるべきことが、3つから2つになるだけで、ずいぶん気持ちがラクになりますよね。
図解PubMedの使い方: インターネットで医学文献を探す
フレイルとサルコペニア、ロコモティブシンドロームの違い
フレイルとサルコペニア、ロコモティブシンドロームの大きな違いは、それらが定義する範囲の広さにあります。
サルコペニアは、筋肉量、筋力および身体機能の低下によって診断されます。
また、ロコモは、筋肉に加えて、骨や筋肉、関節など運動器全体の障害、移動機能の低下にフォーカスしていますので、サルコペニアよりも守備範囲が広くなります。
一方、フレイルは、それら身体的問題に加えて、精神機能や社会力の低下も含めたより広い範囲をカバーする状態です。サルコペニアは、ロコモに含まれ、サルコペニアとロコモはフレイルに含まれると考えていいでしょう。
以下の図で知識を整理しましょう。
Cruz-Jentoft AJ, Age Ageing, 2010 / Cruz-Jentoft AJ, Lancet, 2019. を参考に作図、ロコモを追記・改変
フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームのうち、どれにフォーカスして勉強すべきか?:職域別の重要度(私見)
サルコペニアと運動 エビデンスと実践
本記事の冒頭に、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームの3つの重要度は、一般的に並列ではないことを説明しました。
でも、各職域によってその重要度は変わります。
たとえば、あくまでも個人的見解ですが、以下のような感じと思います。
①介護福祉施設や病院(整形外科病棟以外)の職域
まず、管理栄養士が配置されている介護福祉施設や病院の場合、その対象者は、ほぼ全員がフレイルを通り越した要介護者ですから、フレイルの判定などを行う意味はあまりないないでしょう。
だから、もし私が介護施設の医療職であれば、この3つのうち、サルコペニアを優先して勉強します。
重要度関係: サルコペニア > フレイル(ロコモティブシンドローム)
サルコペニアと運動 エビデンスと実践
②整形外科病棟の職域
整形外科病棟は、ロコモティブシンドロームのメッカ、お膝元です。
ここでは、ロコモティブシンドロームはフレイルやサルコペニアより重要度が低いなどと安易に考えてはいけません。
整形外科病棟に入院している対象者は、ほぼ全員がフレイルを通り越した要介護者でしょうから、フレイルの判定を行う意味はあまりないないでしょう。
もし、私が整形外科病棟に勤める医療職であれば、ロコモティブシンドロームについてしっかり勉強し、次いでサルコペニアの勉強をします。
重要度関係: ロコモティブシンドローム ≒ サルコペニア > フレイル
ロコモティブシンドロームビジュアルテキスト
③保健所、フリーランス、管理栄養士配置のない介護福祉施設の職域
この職域の対象者の多くは、ある程度自立した生活を行っていること、未病である場合が多いですよね。
私は、プロフィールにも記載していますが、将来は独立起業をしたいと考えていますが、もしフリーランスとして地域高齢者の介護予防に関する事業をする場合、フレイルの勉強を優先します。
なぜならば、高齢者の半分はフレイルまたはその一歩前の段階であるプレフレイルだからです(Murayama H, Archives of Gerontology and Geriatrics, 2020)。
ちなみに、地域在住のサルコペニアはいくつか報告がありますが10%前後です(Yoshoda D, Geriatr gerontol Int, 2014 など)。
ロコモティブシンドロームは、フレイルとサルコペニアの間ということで、論文自体も少ないということもあり、私はあまり深く考えません。
というわけで、重要度関係はこんな感じです。
重要度関係: フレイル > サルコペニア > ロコモティブシンドローム
図解PubMedの使い方: インタ-ネットで医学文献を探す
管理栄養士が知っておくべきロコモティブシンドロームのポイント
生活習慣病と健康長寿・フレイル対策 (フレイル対策シリーズ4)
①ロコモティブシンドロームとは?
ロコモティブシンドロームとは、英語で「locomotive syndrome」と書きます。
日本語では、運動器症候群といいます。
2007年に日本整形外科学会が提唱した新しい概念です。
日本の学会が提唱したのが始まりですが、国際的に広めるために横文字・カタカナ標記にしているのでしょう。
その定義は「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態 」です。
具体的には、腰が痛い、ひざが痛いなど運動器(骨・関節・筋肉・神経など)の障害で、早く歩けない、立位がとれないなどの移動機能が低下した状態ということです。
はい、私が思うロコモティブシンドロームのポイントはこれだけです。
簡単ですね。
後ほど、フレイル、サルコペニアとの関係性についてお示しします。
管理栄養士が知っておくべきフレイルのポイント
Gノート増刊 Vol.7 No.6 フレイル高齢者、これからどう診る?〜そもそもの考え方から現場対応まで、最新フレイル健診にも対応!
①フレイルとは?
フレイルの歴史は古く、海外では1980年代にその概念が提唱され、その後、概念や定義、診断方法などが変遷してきているようです。
実は、意外にも、フレイルの世界で定まった定義や診断基準はありません(統一したコンセンサスが得られていない状態のようです)。
フレイルとは、英語で「frail」と書きます。
語源は、「fraility」で、日本語に直すと、虚弱、老衰、脆弱といったところです。
でも、虚弱、老衰、脆弱って、もう元に戻ることは難しいイメージが先行しますよね。
だから、日本では、2014年に日本老年医学会の主導の元、flailityや虚弱と言うのを避けて、「フレイル(frail)」としたということだそうです。
日本で私たちが覚えておくべきフレイルの意味とは、加齢によって心身の活力が低下し、健康でなければ病気でもない「健康と要介護の間の虚弱な状態」で、介護が必要になりやすい状態というものです。
私は、「半健康・半病気」と覚えています(本来のニュアンスとやや違うので使い方に注意が必要です)。
②フレイルの分類
フレイルはとても広い概念で、加齢によって身体的フレイル、精神的フレイル、社会的フレイルの3つの種類があります。
以下、それぞれのポイントを示しますね。
・身体的フレイル:動作が遅くなる、転倒しやすくなる身体的要素で、半健康・半病気になっている状態
・精神的フレイル:認知症やうつ、気力の低下などの精神的要素で半健康・半病気になっている状態
・社会的フレイル:孤独や閉じこもりなどの社会とのつながりの低下や経済的な困窮などの社会的要素で半健康・半病気になっている状態
簡単ですね。
身体的フレイルは予後に関連があるということはほぼ確実ですが、精神的フレイルや社会的フレイルも独立して予後に関係があるという報告が出てきています。
サルコペニアと運動 エビデンスと実践
③フレイルの判定
フレイルの判定方法は、以下のとおりたくさんあります
・米国フリード博士の基準:食事摂取基準にも掲載されている超有名な基準
・改訂日本人版フレイル基準(改訂J-CHS基準):国立長寿医療研究センターが、米国フリード博士の基準を日本人ように特化した評価法の改訂版
・簡易フレイル・インデックス:J-CHS基準は握力と歩行速度を測定しなければならないが、より簡便に質問紙のみで判定するツール
・基本チェックリスト:日本の介護サービス導入に繋がる高齢者の生活や機能の問題を抽出する25項目。身体的フレイルだけでなく精神的フレイルや社会的フレイルの評価を包含
・簡易チェック(指輪っかテスト、イレブンチェック)+総合チェック:東京大学高齢者総合研究機構が市民主体の方法として提案
上から3つ目までは、フレイルの一部である身体的フレイルの判定をするツールと考えたほうがよいでしょう。
下2つは、身体的フレイルに加え、精神的および社会的フレイルを包括的に判定するツールと考えるとよいでしょう。
しかし、判定法が色々あるというのは、使う方からするとやっかいですね。
結局どれを使用すればよいのでしょうね?
私の推しの身体的フレイルの判定法について、こんど記事を作成する予定ですので、ブックマークをつけて、また遊びに来てくださいネ。
管理栄養士が知っておくべきサルコペニアのポイント
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①サルコペニアとは?
サルコペニアは、英語で「sarcopenia」と書きます。
有名な話ですが、ギリシャ語の「サルコ(sarx/sarco)=筋肉」と「ペニア(penia)=喪失」を合わせた造語です。
日本語では、「加齢性筋肉減弱症」と訳されます。
サルコペニアは、1989年にアメリカの学術雑誌で提唱されたワードで、主に加齢による全身の筋肉量と筋力の低下と、身体能力の低下した状態と定義されています。
2016年よりサルコペニアはICD-10のコードを取得しましたので、日本でも傷病名として認められています。
ということは、サルコペニアは「筋肉の病気」という認識をしておくことが大切ですね。
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②サルコペニアの分類と原因
サルコペニアは、論文を紐解くと次の2つに分類されています(Cruz-Jentoft AJ, Age and Ageing, 2019)。
- 一次性サルコペニア:
・加齢性(Aging):加齢性の筋減少
- 二次性サルコペニア
・疾患性(Desease):炎症性、変形性関節症、神経障害など
・不活動(Inactivity):寝たきり、座位活動、身体不活動、体調不良など
・栄養不良(Malnutrition):低栄養/消化吸収障害、投薬による食欲不振、過栄養/肥満など
つまり、一次性サルコペニアは加齢による筋肉量の低下が原因です。
一方、二次性サルコペニアは、疾患や活動量、栄養不良など、加齢とは別の原因によるもので、年齢に関係なく発症する可能性があります。
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③サルコペニアの判定法
・一般の診療所や地域での評価
- 症例の抽出(スクリーニング):下腿周囲長(男性<34 cm, 女性<33 cm)or SARC-F≧4 or SARC-CalF≧11
→ いずれか低値の場合は評価(アセスメント)に進む - 評価(アセスメント): 握力(男性<28 kg、女性<18 kg) or 5回立ち上がりテスト(≧12秒)
→ いずれか低値の場合はサルコペニア(可能性あり)と診断可能
→サルコペニア(可能性あり)に対して、生活習慣介入と健康教育が推奨され、同時に確定診断のために病院に紹介することを奨励。
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・装備の整った種々の医療施設や研究を目的とした評価
- 症例の抽出(スクリーニング):
・以下のいずれかの臨床症状の存在:身体機能の低下や制限、意図しない体重減少、抑うつ症状、認知機能の障害、繰り返す転倒、低栄養、慢性疾患(心不全,COPD,糖尿病,CKD など)
・上記症状が無い場合:下腿周囲長(男性<34 cm, 女性<33 cm)or SARC-F≧4 or SARC-CalF≧11
→ いずれか低値の場合は評価(アセスメント)に進む
- 3つの観点から評価(アセスメント):
・握力:(男性<28 kg、女性<18 kg)
・身体機能:6m 歩行速度( <1.0m/秒)or 5回立ち上がりテスト(≧12秒)or SPPB(≦9)
・四肢骨格筋量(ASMI):DXA(男性<7.0 kg/m2、女性<5.4 kg/m2)or バイオインピーダンス(BIA)法(男性<7.0 kg/m2、女性<5.7 kg/m2)
→ 低骨格筋量+低筋力または低骨格筋量+低身体機能:サルコペニアと判定
→ 低骨格筋量+低筋力+低身体機能:重症サルコペニアと判定
つまり、サルコペニア判定には、低骨格筋量が必須項目ですので、生体電気インピーダンスを測定できるBIA機器の所有が必要です。
国際的な低栄養診断基準でも、骨格筋量の測定が重要視されていますので、BIA機器は栄養管理の重要なツールになっていると認識すべきでしょう。
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まとめ
フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームは似たような言葉で、実際にそれらの概念の一部は交差しています。
すべての内容をしっかり理解できれば、それが最もよいと思いますが、なかなか難しいので、まずは自分の職域に関係のあるところを理解し、それを実践現場で使用していくことがファーストステップだと思います。
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