GLIM基準による低栄養診断を導入すべき3つの理由とクリアすべき1つの課題

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令和6年4月に診療報酬が改定されて以降、GLIM基準というワードを聞くことが多くなってきました。

GLIM基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition criteria)とは、国際的な低栄養の診断基準です。

※GLIM基準の詳しい解説はこちら

回復期リハビリテーション病棟入院料1(回リハ病棟1)では、GLIM基準がすでに導入されています。

一方、それ以外の一般病棟や福祉施設が、自施設にGLIM基準を導入する意味はあるのでしょうか?

答えは、Yesだと思います。

というより、積極的に導入をすすめるべきでしょう。

なぜ、いま、GLIM基準を導入しなければいけないのか?

その理由は?

そこから得られるメリットは?

この記事では、それらの疑問に対して徹底解説をしていきたいと思います。

ぜひ、最後までご覧ください。

GLIM基準を導入すべき3つの理由

GLIM基準を導入するには、自施設の栄養管理のフレームワークを変える必要があります。

そうなると、同僚や他部門の方々、さらには偉い方々に、その必要性をきちんと説明できなければいけません。

そこで、GLIM基準を導入しなければいけない理由について紹介していきましょう。


回復期リハビリテーション病棟のための栄養管理ガイドブック

GLIM基準を導入すべき理由①:GLIM基準が栄養管理の中で一般化される可能性

繰り返しになりますが、回リハ病棟1では、GLIM基準の導入が診療報酬を得る必須条件になりました。

なぜ、回リハ病棟だけが、GLIM基準を導入することになったのでしょうか?

これは、私見ですが、GLIM基準を正しく使い、そしてエビデンスを作る(GLIMの効果を科学的に分析し論文化できる)力を持っているフロントランナーの管理栄養士が、回リハ病棟に揃っているからではないかと思います。

まず、回リハ病棟1で小さく初めて、その効果を科学的に判定しながら、一般病棟や介護福祉施設などに徐々に広げていく戦略なのではないかと思います(これも私見です)。

そうなると、近い将来、栄養管理の中にGLIM基準による低栄養診断が行われていることが、すべての施設において一般化(あたりまえ)する可能性が高くなると思われます。

その根拠は、令和6年診療報酬改定に伴って、すべての医療施設で導入されている栄養管理計画書のアセスメントの中に、GLIM基準という文言が定型書式の中にデフォルトとして入ってきたのです。

現時点では、GLIM基準による評価をしてもしなくてもよいとされています。

でも、わざわざ、してもしなくてもよいものを、厚労省が栄養管理計画書の定型書式の中に入れますかね?

おそらく、これは、近い将来にGLIM基準による低栄養診断を一般化しますよという布石ではないでしょうか。

現在、世界中で、GLIMによる低栄養診断を標準化しようという動きに、厚労省が診療報酬を付けて日本全体に普及させていっているという現状だと思います。

世界および日本中のこの流れに乗り遅れることは、管理栄養士として致命的になる可能性が高いでしょう

GLIM基準を導入すべき理由②:GLIM基準の項目は管理栄養士だけで収集可能


回復期リハビリテーション病棟のための栄養管理ガイドブック

糖尿病の診断基準は、血糖値とヘモグロビンA1cです。

高血圧の診断基準は、血圧です。

肥満の診断基準は、BMIです。

では、低栄養の診断基準は?

これまで、この低栄養の基準がバラバラだったのですよね。

GLIM基準は、低栄養診断の世界基準です。

欧州・米国・アジア・南米の4学会の代表者が一同に会して作り上げられた、低栄養の診断基準なので、これはフォローした方がいいですよね。

重要なポイントとして、GLIM基準の特徴のひとつは、血液生化学検査の項目がないことです。

これは、すなわち、GLIM基準による低栄養診断をするときに、必ずしも医師に頼らなくてもよいということです。

GLIM基準のすべての栄養アセスメント項目は、管理栄養士のフィールドだけで網羅できるということですね。

つまり、GLIM基準をうまく導入できれば、管理栄養士の力だけで(栄養スクリーニングは看護師さんなど他職種の協力があったほうがよいですが)、自施設の患者さんの栄養状態を把握することができますね。

各患者さんのGLIM基準の結果を集めていくと、たとえば、「うちの施設に入院した患者さんは、500 名/月(男性50%、平均年齢75歳)で、低栄養なし55%、中等度栄養不良25%、重度栄養不良20%です。」

みたいなことが、きちんと数字で言えるようになりますね。

この中等度栄養不良および重度栄養不良の患者さんは誰なのかということを、しっかり他部門と共有して、患者さんの栄養状態の改善に努められるといいですね。

GLIM基準のデータを正しく収集し、集約できている管理委栄養士は、チーム医療にとって欠かせない人材になるでしょう。

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GLIM基準を導入すべき理由③:GLIM基準は栄養管理の質向上につながる可能性


臨床栄養 これからの低栄養診断―GLIM基準を深く理解し活用する 2024年7月号 145巻1号[雑誌]

GLIM基準を使うと、「うちの施設に入院した患者さんは、500 名/月(男性50%、平均年齢75歳)で、低栄養なし55%、中等度栄養不良25%、重度栄養不良20%です。」

といったことを数値で把握できることは、前述したとおりです。

この続きをしていきましょう。

各患者さんの退院時に、再びGLIM基準による低栄養診断を行った結果を集めていくと、どうなるでしょうか?

たとえば、「うちの施設を退院した患者さんは、低栄養なし65%(+10%)、中等度栄養不良20%(-5%)、重度栄養不良15%(-5%)です。」

みたいなことが、きちんと数字で言えるといいと思いませんか?

このような結果が得られると、自分が行っている栄養管理の方向性に自信がもてますよね(あるいは反省する機会になりますよね)。

さらに、この数字を改善させるためにはどうすればよいのかということを、数字ベースで科学的に考えていくのです。

XX%改善を目標とするために、あと1名の管理栄養士が必要であることを上層部に訴えてもよいでしょう。

詳細な筋肉量測定を行うために、体組成計(BIA法)の購入を上層部に交渉してもよいでしょう。

すべては、患者さんの栄養状態の改善のためです。

このように、GLIM基準の導入は、栄養管理の質を向上させ、患者さんの利益につながる可能性があるのです。

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GLIM基準を導入するためにクリアすべき1つの課題


臨床栄養 これからの低栄養診断―GLIM基準を深く理解し活用する 2024年7月号 145巻1号[雑誌]

GLIM基準のアセスメント項目は、管理栄養士だけで収集することができます。

でも、GLIM基準は、その前段階に、妥当性のある栄養スクリーニングを行うというのがルールです

※妥当性のある栄養スクリーニングに関する記事はこちら

多くの施設において、栄養スクリーニングは行っていますが、そこで使用しているツールや項目が、(厳しい言い方になりますが)時代についていっていない事が多い現状のようです。

GLIM基準を導入するのと同時に、栄養スクリーニングの方法を変える必要があるということですね。

多くの中規模以上の病院では、栄養スクリーニングを看護部門が行っている現状があると思います。

つまり、看護部門の協力を得たうえで、施設として栄養スクリーニングを見直すことが求められます。

逆の言い方をすると、妥当性のある栄養スクリーニングを導入することこそが、GLIM基準を導入するための最も大きな課題になると思います。

現在の世界的な栄養アセスメントの流れや、今後の診療報酬改定を見据えて、GLIM基準を導入しなければいけないこと、そしてそのためには今の栄養スクリーニングを時代的に見直さなければいけないことを、上層部や他部門に説明することがとても大切になるのではないでしょうか。

まとめ


低栄養対策パーフェクトガイド 病態から問い直す最新の栄養管理

この記事では、自施設にGLIM基準を導入する意義やメリットについて、次の3つをポイントとして紹介してきました。

もう一度復習しましょう。

①GLIM基準は、おそらく近い将来に、一般病院や介護福祉施設でも一般化していく流れになると予想されます。

②GLIM基準の栄養アセスメント項目は、管理栄養士だけで収集が可能ですので、チーム医療の中で非常に重要なポジションを得ることが可能になります。

③GLIM基準は、①診療報酬のため、②管理委栄養士のポジションのためという意味もありますが、何よりも大切なのは、患者さんの栄養状態がよくなるためであることを理解しましょう。

このことを忘れなければ、GLIMを導入するためにクリアすべき1つの課題である栄養スクリーニングの変更も可能になるでしょう。

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